渦巻く知識

ひろこちゃんとてんしのやかた

ひろこちゃんのお家は街の外れにありました。
ひろこちゃんは五歳の時に病気に罹ってしまい、お友達がいませんでした。
でも、お父さんとお母さんがとても優しく看病してくれていたので全然寂しくありませんでした。

ところが、ひろこちゃんが八歳になったある日から、お父さんとお母さんはあまりひろこちゃんのお部屋に来てくれなくなりました。
なので、ひろこちゃんはぬいぐるみとばっかりおしゃべりをしていました。
「お父さんもお母さんも、ひろこのこと嫌いになっちゃったのかしら?」
ひろこちゃんは寂しくって泣いてしまいました。

ひろこちゃんが1人で泣いていると、天使がやってきました。
「ひろこちゃん泣かないで、神様はひろこちゃんのらことを見ているよ。さびしくなんかないよ。」
天使はそう言うとらひろこちゃんの涙を拭ってくれるのでした。
「ありがとう天使さん。でもお父さんとお母さんがひろこのお部屋にあまり来てくれないの。病気も悪くなってるみたいだし私寂しいの。」
ひろこちゃんが言うと、天使は優しく抱きしめてくれるのでした。
ひろこちゃんは、天使がいてくれて少し寂しくなくなりました。

ある日のことです。天使がとてもあわてています。
「ひろこちゃん大変!あくまが来ているわ!大変!大変!」
それを聞いてひろこちゃんはとても怖くなりました。
「怖い!あくまが来ているのね!お父さんとお母さんに伝えなきゃ。」
ひろこちゃんは大好きなお父さんとお母さんを助けたいと考えました。
お部屋を出て、一階の広間に行こうとすると、扉の向こうから声がします。
「ケヒヒ…ひろこちゃんは上の部屋にいるぞ。お父さんとお母さんに化けて行けばきっもドアの鍵を開けてくれるぞ。そうしたら食べてやろう。ケヒヒ…。」
なんと、あくまはお父さんとお母さんの姿に化けていたのです。
「お父さんとお母さんがお部屋に来てくれなくなったのはあくまが化けていたからなんだ!」
天使が言いました。
「そんな!お父さん、お母さん…。」
ひろこちゃんは泣いてしまいました。
「ひろこちゃん逃げなきゃ!あくまたちが来るわ」
天使にうながされて、ひろこちゃんは三階にある自分のお部屋に逃げました。

しばらくすると、扉を叩く音がして、
「ひろこちゃ〜ん、お父さんだよ。ドアを開けて〜」
「ひろこちゃ〜ん、お母さんですよ。お部屋に入れて〜」
と、あくまがささやきます。
「いやよ!いや!あなたたちあくまでしょう!ひろこ知っているんだから!」
ひろこちゃんは泣きながらベッドの上で叫びました。
「怖がらなくていいよ〜、お部屋に入れて〜」
あくまたちはなおもささやきます。
「ああ、どうしたらいいの…助けて神様」
ひろこちゃんは天に祈りました。
「大丈夫よひろこちゃん。私が神さまにお願いしてきてあげるからね。大丈夫よ。」
天使が優しく言いました。
ひろこちゃ〜ん。開けて〜」
あくまが扉の向こうでささやきます。

しばらくして夜になると、あくまたちはささやくのをやめました。
ひろこちゃんは怖くてひとりでお部屋の中で泣いていました。
夜が明けて、空が明るくなってくると、またあくまたちが来るんじゃないかとひろこちゃんは不安になりました。
天使が来ないかと窓を開けて外を見ると、あくまが屋根づたいにこちらに向かってきていました。
「おおい!ひろこちゃ〜ん」
あくまが笑顔で手を振ります。
「たいへん!あくまがやって来るわ!怖い、怖いわ!お父さん、お母さん…」
ひろこちゃんがお部屋で泣いていると、天使がやって来ました。
「天使さん助けて!あくまがやってくるわ!怖いわ!」
ひろこちゃんが言うと、天使はひろこちゃんを優しく抱きしめて言うのでした。
「ひろこちゃんもう大丈夫よ。神さまがあなたを助けてあげなさいと言っているわ。私があなたを神さまのもとに連れて行ってあげるからね。本当のお父さんとお母さんにもきっと会えるわ。」
天使の優しい言葉に、ひろこちゃんは安心したのでした。


そうして、あくまたちがやって来る前に、ひろこちゃんは天使に連れられて神さまのもとへ行ったのでした。



おしまい